2002年度総合診断実習 院内感染対策総論・実習 プリント
- 院内感染
- 入院後に罹患あるいは発症した感染症
- 入院後に感染した病原体による感染症
- 患者自身が保有していた病原体による感染症
- 常在菌による感染症では両者の判別が困難な場合が多い
- 感染経路と注意すべき主な病原体
- 空気感染:浮遊感染粒子が落下しないため陰圧空調の病室での管理が必要
- 結核菌−排菌された後乾燥すると、長期間空気中を漂い、かつ気管の奥まで到達するのに丁度いい大きさの微細な粒子となる
- 麻疹ウイルス−ワクチン接種率の低い世代が病院職員として採用され始めたため、今後発生頻度の増加が予想される
- 飛沫感染:飛沫だけでなく乾燥した浮遊飛沫核も感染源となるが、短時間のうちに落下する
- インフルエンザウイルス−ある種の患者にとっては致死的感染症であるにも関わらず、蔓延が日常化しているため、ワクチンの任意接種以外、殆ど対策がなされていない
- クロストリジウム・デフィシレ−感染のリスクは抗生物質投与患者や高齢者に限られるが、下痢便等に含まれる芽胞が病室にばらまかれると、完全に除去するのが極めて困難なので、感染源となり続ける恐れがある
- 接触感染:浮遊する感染粒子による感染の恐れはない
- MRSA−常在菌なので、医療従事者の手などを介して無意識に伝播させやすいが、感染症発症のリスクは免疫力の低下した患者に限られる
- 緑膿菌−環境菌の中で人体への親和性が極めて高いため、医療従事者の手などを介して無意識に伝播させやすいが、感染症発症のリスクは免疫力の低下した患者に限られる
- セラチア−ヒトの腸内や環境中に広く分布し、病原性は極めて弱いが、水と僅かな栄養で爆発的に増えるため、不適当な医療行為が重なり、大量の菌が一度に血管内に押し込まれたような場合に限り、致命的な感染症を引き起こす
- 針刺し事故:接触感染の一種だが、固有の防止対策が必要
- 院内感染対策
- 強感染性病原体の早期検出と伝播防止
- 空気感染−結核、麻疹
- 飛沫あるいは接触感染−水痘、伝染性紅斑、流行性角結膜炎、RSウイルス等
- 隔離、接触制限
- 大量伝播源の早期検出と除去
- セラチア−医療現場の大量増殖巣、クロストリジウム・デフィシレ−便中の芽胞、アスペルギルス−解体工事の粉塵、クリプトスポリジウム−上水道汚染
- 免疫力低下が予想される患者への伝播防止システム(逆隔離)
- 長時間手術、高侵襲手術
- 意識障害、調節呼吸
- 血液透析
- 乳児、高齢者
- ステロイド、免疫抑制剤、抗白血病薬投与
- 個別の対応方法につき高度の臨床的判断が要求される
- 弱毒・弱感染性病原体の接触感染の検出と予防
- MRSA、緑膿菌、セラチアなど
- スタンダードプレコーション(後掲)
- 院内感染症疫学レポート−病棟別等の区分毎に特定の病原体の検出状況を一覧にしたもの
- 抗生物質と耐性菌の増加
- 抗生物質の投与により病巣において耐性遺伝子の発現が誘導されるため検出頻度が増える
- 抗生物質の投与により病巣において耐性菌が選択され生き残るため検出頻度が増える−当初の存在頻度が検出限度以下の場合、表面的には菌交替あるいは感受性パターンの異なる菌株への交替が起こったように見える
- 検体に残留している抗生物質により耐性遺伝子の発現が誘導されるため検出頻度が増える
- 検体に残留している抗生物質により耐性菌が選択され生き残るため検出頻度が増える
- MRSA、VRSA、VREなどは常在菌なので、これらに対して特に抵抗力を失ったごく一部の患者に限ってリスクとなることを正しく理解し、過剰反応を避ける必要がある
- 多剤耐性結核菌は誰にとっても重大なリスクとなるので、十分な対策が必要である
- スタンダードプレコーション(標準予防策)
- 特定の病原体や感染事故だけに注目した対策が限界に達したために生まれた、すべての伝播機会を対象として対策を講じようという考え方に基づく予防策
- ただし、すべての院内感染に対する万能策のような印象を与える名称がつけられているが、全くそうではない
- 防止できるのは伝播機会の一部であり、かつ臨床的に重要でないと考えられる対策までも画一的に強要されるという欠点がある
- 手洗い
- 手の表面に付着した微生物を減少させるための手段
- 感染リスクをゼロにするためのものではない
- 毛穴や汗腺の奥の常在菌を除去することはできない
- 時間が経てばもとの常在細菌叢に戻る(自己検体で確認する)
- 医療行為の前の手洗いの後、常在細菌の豊富な鼻腔や口腔等に触れないよう特に注意を要する(自己検体で確認する)
- 手袋およびその他の感染防護具
- 感染源から医療従事者への伝播を防止する
- 医療従事者から患者への伝播を防止する
- いずれの目的かを意識していないと、時として誤りを冒すことがある
- 交換を忘れるなど不適切な使用により、むしろ病原体を伝播させることがある
- 針刺し事故対策
- リキャップの禁止
- セーフティーボックス使用の励行
- やむを得ずリキャップするときは、キャップを置いて針ですくい上げる
- キャップを置く場所がない場合は、針を地面と水平に持ちつつ、その真下に、キャップを開口部を上にして地面と垂直に持ち、針を水平に保ったまま真下に移動させて先端をキャップの開口部と接触させる
- 実習(1人1項目ずつ全員の前で模範演技をする)
- 注射器による採血と穿刺式検体容器への分注
- 注射器による静脈注射
- 翼状針による点滴
- 翼状針による採血および静脈注射
- 翼状針による採血および点滴
- 留置針による点滴
- 留置針のヘパリンブロック
- 3方活栓からの静脈注射
- ゴム管穿刺による静脈注射
- 院内疫学情報の解釈
- 目的はアウトブレイクの検出であって、単に多発部署の検出ではない
- 他の部署に比べ検出例が多いかどうかではなく、各部署のベースラインより増加しているかどうかを判別する
- ある部署での検出例が多くても、必ずしも感染頻度が増加していることを意味しない−罹患率が同じでも罹病期間が長ければ有病率は高くなる
- 部署間のベースラインの差異
- データ収集におけるバイアス
- 検査実施頻度
- 検体採取の手技
- 臨床検査の検出限界
- 病巣の病原体の極く一部が検体として採取され、検体の極く一部が検査に用いられ、増殖したコロニーの極く一部に対してのみ同定および感受性検査が実施される
- 異なる菌株が存在しても存在頻度が著しく低ければ高頻度株に隠されて検出できない
- アンケート(これをもとに木曜日の最後にディスカッションを行う)
- 次の中からひとつ選択
- とても分かりやすかった…(1)
- まあ分かりやすかった……(2)
- どちらとも言えない………(3)
- 分かりにくかった…………(4)
- とても分かりにくかった…(5)
- 次の中からひとつ選択
- とてもためになった………(ア)
- まあためになった…………(イ)
- どちらとも言えない………(ウ)
- あまりためにならなかった(エ)
- 全くためにならなかった…(オ)
- 良かった点、悪かった点をそれぞれ具体的にひとつ以上列挙