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第44回日本臨床病理学会総会 44th JSCP (Oct., 1997) p179
179

インターネットを使った臨床検査オンラインコンサルテーションの試み

西堀眞弘*1 大場康寛*2 土屋達行*3 木村 聡*4

*1 東京医科歯科大学医学部附属病院検査部
*2 近畿大学ライフサイエンス研究所
*3 日本大学医学部臨床病理
*4 昭和大学医学部臨床病理

Online Consultation on Laboratory Medicine Using the Internet

Masahiro Nishibori*1 Yasuhiro Ohba*2 Tatsuyuki Tsuchiya*3 Satoshi Kimura*4

*1 Clinical Laboratory, Tokyo Medical and Dental University, Medical School
*2 Life Science Research Institute, Kinki University
*3 Dept. of Clinical Pathology, Nippon University, Medical School
*4 Dept. of Clinical Pathology, Shouwa University, Medical School

revised edition<Last updated, Nov. 15, 1997>
(revised portions from the first edition are marked with [revn] signs.)


目次

【目的】 | 【方法】 | 【結果】 | 【結論】 | 謝辞 | 文献
スライド1:タイトル
スライド2:目的
スライド3:方法・具体的手順
スライド4:方法・運用内規
スライド5:結果・アクセス数の推移
スライド6:結果・質問件数の推移
スライド7:結果・質問内容
スライド8:結果・質問者の種別および所属
スライド9:結果・質問者および回答者の所在地
スライド10:考察
(初版からの改訂内容)


【目的】[スライド2] コンサルテーションは臨床検査医を特徴づける医療業務のひとつとして重要性が高まりつつある。しかし臨床検査医の絶対数が不足しているうえ、施設や地域による所在の偏りが著しく、現状では十分にニーズに応えることが困難である。また一人一人が広範な臨床検査の専門知識を全て網羅するのは不可能である。そこで本研究では、急速に普及し一般化しつつあるインターネットを活用し、地理的・時間的隔たりを解消することによって臨床検査医へのアクセスを容易にすると共に、臨床検査医のネットワーク化を進め、コンサルテーションの共同受け入れ体制の確立を目指す。言わば、インターネット上に臨床検査医学の仮想シンクタンクの創設を試みる[1]。

【方法】[スライド3] (1)コンサルテーションの受付要項を記載したホームページ(URL http://202.242.169.152/clap/clap.html)を公開し、質問は電子メールでのみ受け付ける。(2)受付で質問内容をチェックし、不適切と思われるものはそこで適宜処理する。(3)回答は日本臨床検査医会の協力を得て、適任と思われる専門家に作成を依頼する。(4)回答を電子メールで質問者に返送するとともに、代表的な質疑応答は公開に適した形に編集し、質問者と回答者の了解を得て「代表的Q&A」のページに掲載する。(5)現時点では電子メールのセキュリティが不十分なので、質問者のプライバシー保護のため、医療相談等、個別症例が特定される内容は扱わないなどの内部規定[スライド4]を設けたうえ、原則としてオープンな運用とする。

【結果】[rev1] (1)1997年10月末までに97件の質問が寄せられ、37名の専門家から回答を得た。(2)質問内容は、一般:11、血液:10、生化:32、免疫・血清・輸血:15、微生物:7、生理:8、その他検査:9、医療相談:7、その他:2であった[スライド7]。(3)質問の難易度は、教科書レベルの基本的なものから、極めて専門的なものまで、さまざまであった[スライド7]。(4)質問者の職種は、医師:20、臨床検査技師:42、高校・大学・院生:8、医療職以外:7、不明:20で[スライド8]、所在地は23都道府県に渡った[スライド9]。(5)質問数の推移は月ごとにかなりばらついたが、1996年以前:18、1997年1〜5月:32、1997年6〜10月:46と増加傾向にあった[スライド6]。(6)「代表的Q&A」へは1ヶ月に200回以上のアクセスがあった[スライド5]。(7)プライバシーやセキュリティー、あるいは回答の信憑性に関し苦情やトラブルは全くなかった。

【結論】[スライド10] インターネットを用いた臨床検査分野のオンラインコンサルテーションを試行したところ、質問者の所属や所在地に制約を受けずに数多くの質問が寄せられ、その実用性と社会的ニーズの大きさが実証された。今後は、件数増加に伴う運営や回答の負担増大への対策、回答体制の組織化、教科書的な質問と専門的な質問との取り扱いの区別等が課題である。

(回答作成にご協力いただいている日本臨床検査医会有志の先生方に深く感謝いたします)

文献

[1]
木村 聡、検査医会への一提案 コンサルテーションに答えられる電脳情報網を創設しよう、LabCP Vol.13、128-129、1995

初版(抄録掲載)からの改訂内容

[rev1]
【結果】に記載した各種データを等を発表時点の数字に改訂
[rev2]
発表時のスライド1〜10を添付


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